DESIGN + TOKYO

WEB MAGAZINE by TP TOKYO vol.002

デザインに隠れるメッセージ。
新宿NEWoMan サードウェーブコーヒー。

VERVE COFFEE ROASTERS ビジネスプロデューサー
岩田洋一郎さん インタビュー
2016.08.15

カフェ文化の変遷

 昭和から平成にいたる時代のなか、日本のカフェカルチャーも大きく様変わりしてきた。1960年代頃までには街に無数の喫茶店が出現し、雰囲気満点の店内で談話や音楽を楽しむ文化が広く浸透。美味しいインスタントコーヒーの登場により、一般家庭でも気軽にコーヒーを楽しめるようにもなった。
こうしたファーストウェーブに続き、90年代後半には「スターバックス」や「タリーズ」といったシアトル系コーヒーチェーンが日本にも進出。インディペンデント系ロースターによって提供される高品質なコーヒーがまたたく間に市民権を得ていく。消費者が、この「質」を重視し始めたタームがいわゆるセカンドウェーブと呼ばれるものだ。

そして、近年、第三の波が日本のカフェカルチャーを大きく変えようとしている。

 アメリカを発祥とするサードウェーブコーヒーの新潮流には、いくつかのキーワードが見てとれる。ひとつは、生産地からカップまでの一貫した品質管理と、焙煎や淹れ方などプロセスに対するこだわり。さらには、昔ながらの喫茶店にも通じる顧客への丁寧な対応も特徴的だ。そしてもちろん、洗練された店舗の空間設計をはじめ、カフェのアイデンティティを形成するクールなデザイン性。

美味しいコーヒーだけでなく、その場所にいる満足感、豊かな時間を提供するのが、当たり前の時代になってきているのだ。

サードウェーブの本質

 では、サードウェーブの潮流に乗り、成功している当事者はどのような哲学を持ってマネジメントを行っているのか。去る4月に日本一号店をオープンさせた「ヴァーヴコーヒー ロースターズ」のビジネスプロデューサーの岩田洋一郎さんはこう話す。

「いわゆるサードウェーブと呼ばれるカフェはいくつもありますが、コーヒーに対するアプローチはみなそれぞれに異なります。もちろんどういうショップにしていこうという方向性も違っていて、各ショップがどんな手法で個性を表現しているかをお客さんも楽しんでいるんじゃないですか。つまりサバイブしていくためには、個性的なグランドデザインが必要だし、ディテールにもこだわり抜いたデザインが求められる時代なんですよね。インディペンデントなショップがそれぞれ面白いことを実現していくという流れ。それがサードウェーブの本質であり、人気を呼んでいる理由だと思います」

 めまぐるしく人々が交錯するJR新宿駅付近にあって、ヴァーヴコーヒーの温かく、モダンな空間はひときわ印象的。つい立ち寄って一息つきたくなる空気が、店舗の外からも感じられる。

「ヴァーヴはコルビーとライアンという音大の同級生が、サンタクルーズという小さなビーチタウンで始めたカフェ。だからサーフィン帰りのサーファーたちが、気軽にコーヒーを楽しむ場所として知られてきたんです。そういうカルチャーを僕らは大切にしたかったし、自分たちが働いていて楽しいような空間にもしたかった。そんな僕らの考え、フレンドリーな方向性が、店舗のデザインやカフェ全体の空気感にもにじみ出ていると思います」

伝えたい思いやストーリー

 足下にはファッショナブルなタイルが敷き詰められ、壁にはこだわりのアートピースやエアプランツなどが並ぶ。店内にはオリジナルのコーヒー豆やボトルを始め、トートバッグ、キャップや雑誌などが置かれ、洒落た雑貨店のようなムードさえ感じさせるほど。確かに、唯一無二の個性が随所に表現されている。

「トートやマグカップ、Tシャツなどはアメリカのサーフマガジンでアートディレクターを務めていたマシュー・アレンによるもの。また、空間デザインは本国の創業者と日本の著名なデザイナーがディスカッションしながら床のタイルにしても特別な組み合わせのタイルを作ってもらいました。落ち着きを感じさせる木材や真鍮の装飾は、カリフォルニアの店舗からインスパイアされて日本風にアレンジ。質の高いコーヒーを提供することが第一ですが、僕らは幅広いクリエイションに興味があって、顧客に伝えたい思いやストーリーがたくさんある。単にコーヒーを提供する場所ということではなく、なんだか気になって、いつも立ち寄りたくなる空間にしていきたいという気持ちはやっぱりありますね」

集客へのヒント

過度な装飾は避けつつ、ショップの主張がほどよく伝わるようなデザインセンス。カフェ業界のトレンドには、集客に結びつくさまざまなヒントが隠れていると言えるだろう。どんな業界においても顧客がデザインを求める時代。問われるのは、商品やサービスの質に何をプラスアルファしていくか。そのセンスや個性が、今後益々、集客アップのポイントとなっていくのだろう。

VERVE COFFEE ROASTERS(ヴァーヴコーヒー ロースターズ)
2007年、カリフォルニアで2人の音大生が始めたコーヒーショップ。2015年にはロサンゼルスに進出し、3店舗同時出店。世界中から高品質な豆を買い付け、焙煎、抽出まで一貫してプロセスにこだわるスタイルで、ファンを獲得していく。2016年4月、JR新宿駅南口の新商業施設「NEWoMan」に日本一号店を出店した。

https://vervecoffee.jp

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