DESIGN + TOKYO

WEB MAGAZINE by TP tokyo vol.019

本物のクールはどこにある? 葛飾で生まれた「大一アルミニウム製作所」の 現代性に注目

大一アルミニウム製作所 取締役社長 平山雅弘さん インタビュー
2021.9.15

SDGsの思想は
クールなブランドの大前提

 どのようなテイストが今、クールなのかは時代の空気によって目まぐるしく変わる。そんな変化のスピードがとりわけ速いのはたとえばファッションの領域だろう。昨年流行していた色や質感、フォルムやスタイリングが今となっては古い、ダサいとなってしまうファッションのトレンド。巡り巡って40年ほど前のバブル期に受け入れられた流行が、また脚光を浴びるといった現象も容易に起きる。

 こうした流行の遷移はなにも表層的なルックスだけが要因となるわけでもない。たとえばそのブランドや事業体が有する「世界観」や「思想」「哲学」といった目に見えない部分が多くの消費者から支持を得る大きな材料となり得る。そんな観点で現在の世界を見てみると、トレンドを作り出す大きな要素のひとつに「SDGs」への確かなコミットというポイントが挙げられるだろう。端的に言えば、循環型社会の実現に向けてどれだけそのブランドや事業体が真剣かつ現実的な取り組みを行っているか、そのような思想を持っているかが、今の時代において消費者の共感を得る重要なキーワードとなっている。裏返せば、いくら表層を美しく見せても環境負荷の意識が薄ければそれはダサい行いである、というのが世界的なビジネスの潮流だ。

 2019年、サステナビリティ先進国のスウェーデンにおいて、五輪代表公式ウェアを提供するブランドにユニクロが選ばれた。世界中のトップブランドが候補として挙げられたなか、ユニクロの柳井正会長がプレゼンテーションでスウェーデン側から投げかけられた一番目の質問は「環境負荷軽減の取り組みについて」だったという。このエピソードから分かるのは、国際的なビッグビジネスの場で、ウエアの機能性やコスト、デザイン性よりもSDGsへのコミットが重視されたということ。SDGsすなわちクールということではなく、いまや環境への意識はクールなブランドの大前提であると言えるのかもしれない。

アルミニウムがなぜ
クールなのか

 今回、クールで東京的なデザインの発信源として注目したのは、古くから職人たちが集う地域として知られる葛飾区のとある工場。創業以来、70年近い歴史を有する「大一アルミニウム製作所」だ。戦後、物資が不足する時代にアルミニウムを使って数々の生活用品をリリース。現在までアルミを材料に、地道なものづくりを続けてきた企業である。


「長年、私たちはアルミを使って皆さんの生活を支えてきました。その取組みはこれからも変わりませんし、アルミという材料にはこだわっていきたい。一方で、今、世界的に脱プラスティックが叫ばれていますよね。そのような視点でも事業を発展させていきたいと考えているんです。安くて成型が簡単ということでプラスティックはもてはやされてきましたが、時代は大きく変わってきました。私たちはアルミ製品の良さをあらためて普及していくことが、SDGsの時代にふさわしい行いだと考えています。アルミはリサイクルに適した材料であり、環境への負荷が少ないですからね」  

このような話を聞くと、少しづつ、目の前のアルミ製品が極めて現代的でクールなプロダクトに見えてくる。とは言え、我々、一般人はアルミという素材について知っているようであまり深くは知らないことにも気づく。そんなアルミという素材について、平山さんはこう説明する。

「ボーキサイトという鉱石を粉砕・薬品処理するとアルミナという物質となり、そこから電気を加えて不純物を取り除いていくとアルミニウム地金が誕生します。これを溶かしたり、伸ばしたりすることで製品素材に成形されます。こうしたプロセスから、しばしばアルミは電気の塊だと言われてきました。一方で、アルミをリサイクルする際には、新たにアルミ地金を製造する時に比べてわずか3%程度のエネルギーで済みます。すなわち、極端に電気の消費を抑えることが可能になります。リサイクルを前提とすれば、アルミが激しく電気を消費するということにはなりません。そもそもアルミはリサイクルが容易な材質なので、長く、丁寧にアルミを使っていくということが今では環境負荷の軽減につながるというのが一般的な考え方ですね」

 たとえば現在、自動車のエンジンには産業用のスクラップと化したアルミが広く利用されている。鉄の約1/3の軽さで、加工性に優れ、光や熱の反射率が高く、耐食性にも優れ、磁気を帯びないなど材料として多様なアドバンテージを持つアルミ。プラスティックのゴミ問題が深刻化するなか、アルミは生活の様々な場面で使える材料として、その価値があらためて注目されているのもうなづけるだろう。

地球のために、
誰にでもできる
「アルミ製品」の利活用

多様な利点を持つアルミを使って、時代に合ったものづくりを推進しようとしている平山さん。レトロなデザインは自社で考案。風合いのある弁当箱や携行小物は今、あらためて引き合いが増えている商品群だと話す。

「アルミの弁当箱などは以前から根強い人気があったので、ここからさらに定番商品を開発していきたいですね。お役目がすめばきちんとリサイクルできるという部分ももちろん利点ですが、今、着目しているのはこれ以上リサイクルされず、長く使ってもらえる生活用品です。たとえば"30センチものさし"はどこの家庭にもありますよね。でも、安価なプラスティック製のものを何度も買い換えているという家庭は多いのではないでしょうか。私たちが開発中のアルミ製のものさしであれば、小学生の時から大人になるまで使っても目盛りが消えません。このように一生使える一点もののアルミの生活用品を少しずつ世に広めていきたい。優れたアルミ製品を使うということは、モノを大切にするという行いとセットなのだと思います」

生活の中に深く入り込んだプラスティックを少しずつアルミや他のサステナブルな素材へと変えていく。これは今日から誰でもできるSDGsへの取り組みだ。TP tokyoでもサステナブルなパッケージの材料としてアルミに注目。大一アルミニウムとのコラボレーションでモダンなランチボックスの販売を開始した。SDGsの思想や行いはクールで 楽しく現代的。そんな思いが新しくリリースされるランチボックスには込められている。

大一アルミニウム製作所
1952年創業の老舗アルミ加工メーカー。弁当箱、油こし器、ペンケース、クリップなど生活雑貨、キッチン用品などの製造販売、OEMによる生活雑貨、化粧雑貨、文具の製造を行う。確かな技術を有するブランドが集結した「葛飾町工場物語」の認定企業としても知られる。

http://www.daiichialuminum.co.jp

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